家族葬
2025.01.07
【終活を始めるシリーズ】遺言書を書いてみよう!
「いざ終活をはじめようと思っても、何からはじめればいいのかわからない。」
そう思っている方は少なくありません。
このコラムでは、これから終活をはじめたいと考えている方に向けて、終活でやること、行う手順、気をつけたいことなどを全10回にわたってお伝えしていきます。
第5回目となる今回は、遺言書についてです。遺言書をのこすメリットや、遺言書の作成方法などを、注意点も交えてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
遺言書を遺すメリット
そもそも遺言書とは、自分の死後、自分の資産を「誰に」「どのような形で」「どれだけ」遺すかというご自身の意思を記したものです。
遺言書を遺す最大のメリットは、遺産の扱いについてご自身の想いを反映できるという点にあります。また、きちんと意思表示をしておくことで、相続に関するご家族の負担を減らし、相続人同士のトラブルを避けることにもつながります。
遺言書の種類
遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つの種類があります。それでは、さっそく、それぞれの違いをみていきましょう。
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
作成方法 | ご自身で全文と氏名を自書し、押印をする (財産目録は自書でなくても可) | 2人の証人立会いの元、遺言者が口述した内容を公証人が記述する | 2人の証人と公証人立会いのもとご自身で作成した遺言書を公証役場に提出し、公証人が日付等を封筒に記載する |
証人の有無 | 不要 | 必要 | 必要 |
保管方法 | ご自身で保管 ※「自筆証書遺言書保管制度」を利用の場合は法務局 | 公証役場で保管 | ご自身で保管 |
検認手続き | 必要 ※「自筆証書遺言書保管制度」を利用の場合は不要 | 不要 | 必要 |
費用 | 不要 ※「自筆証書遺言書保管制度」を利用の場合は、1件¥3,900必要 | 必要 | 必要 |
メリット | ・誰でも気軽にお金をかけずに作成できる。 | ・最も有効性の高い遺言書が作成できる。 ・公証役場で保管してくれるので紛失や書き換えの心配がない。 | ・遺言の内容を第三者に知られることなく、本人が作成したものであることを証明できる。 |
デメリット | ・無効になる可能性がある。 ・紛失や書き換え、遺族に発見されないリスクがある。 | ・費用や手間がかかる。 | ・無効になる可能性がある。 ・紛失や書き換え、遺族に発見されないリスクがある。 ・費用や手間がかかる。 |
自筆証書遺言
紙とペンがあれば誰でも作成でき、お金もかからないため、最も手軽に作成することができる遺言書です。しかしその分、不備があると無効になってしまったり、自宅保管中に紛失や書き換えが行われるリスクもあるため注意が必要です。自筆証書遺言を作成する際は以下のポイントを押さえておきましょう。
【自筆証書遺言作成のポイント】
・必ず「自筆」であること
※財産目録は自筆である必要はありません。ただし自書ではない財産目録が添付されている場合、すべてのページに署名、押印する必要があります
・作成した日付(年月日)を自筆で記入すること
・住所・氏名を自筆で書くこと
・氏名の後ろに押印をすること
※印鑑の一部が消えていたりすると無効になってしまうのでハッキリと押印しましょう
※認印でもよいですが、長期保存に耐えられるよう、実印+朱肉がおすすめです
・間違えた場合は訂正箇所に取り消し線をひき、訂正印を押した上で、欄外の余白にどこを訂正したかを書いて署名をする
・遺言書が複数枚にわたる場合はホチキスで止めてページを振り、改ざん防止のため、ページの境目に契印を押しておく
・遺言がそのまま入るくらいの封筒を用意し、封筒の表には「遺言書」と書き、裏面に日付(年月日)と遺言者の氏名を書く
また自筆証書遺言は、ご自身の死後、家庭裁判所で遺言書の内容や状況を確認してもらう「検認」の手続きが必要になります。もし遺族が検認前に誤って開封してしまった場合、罰金を課せられたり、開封した遺族が偽造を疑われてしまったりして、かえって争いの元になってしまう可能性があります。誤開封防止のためにも、封筒のどこかに、「遺言者の死後、開封せずに家庭裁判所へ持参し検認の手続きが必要」などの記載をしておくとよいでしょう。
また紛失等のリスクを避けるため、「自筆証書遺言保管制度」を利用するのもおすすめです。
自筆証書遺言保管制度とは
令和2年からはじまった、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度です。この制度を利用することで遺言書の紛失や書き換え、あるいは遺族に遺言が発見されないリスクを避けることができます。
1件あたり3,900円で遺言書の保管に関する様々なリスクが回避できるので、自筆で遺言を作成する場合は、利用するとよいでしょう。 ただしこの制度は、遺言の有効性を保証するものではありません。
公正証書遺言
公証役場で公証人と証人2名の立ち合いのもと作成する遺言書で、最も確実性の高い遺言書の形式です。また作成した遺言書の原本を公証役場で保管してくれるので、紛失や書き換えのリスクも避けることができます。作成時は、公証人が病院などに出向いてくれる出張サービスもあるため、文字が書けない状態でも遺言書を作成することができます。ただしその分、自筆証書遺言に比べて費用や手間がかかる点はデメリットと言えます。
【公正証書遺言の費用目安】
公正証書遺言にかかる費用は、公正証書役場で支払う手数料と、専門家に依頼する場合の報酬です。
●公正証書役場での手数料の目安
手数料は相続財産の額によって異なります。
例)財産が100万円以下なら手数料は5,000円、1,000万円〜3,000万円なら23,000円、5,000万円〜1億円なら43,000円 が目安となります。
●専門家へ依頼する費用の目安
遺言書の作成や執行は、確実性を保つために弁護士や行政書士などの専門家に依頼することをおすすめします。そのための費用は、依頼する相手によっても異なりますが、概ね、相続財産の1%〜となることが多いようです。また、銀行や信託銀行の遺言信託サービスを利用する方法もありますが、そちらも報酬を相続財産の1%〜2%としていることが多いようです。ただし銀行や信託銀行の場合は、最低報酬額が設けられているため、財産が少ない場合は高くついてしまう可能性があるため注意が必要です。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、誰にも遺言の内容を知られないまま、遺言の存在だけを公証役場で認めてもらうという遺言書の形式です。ただし、公正証書遺言と同じように手間や費用がかかる上に、無効になりやすく、発見されないリスクなどもあるため、実務上はほとんど利用されていません。
遺言書を自筆で遺す際の注意点
遺言書は、法的に定められた方法で残さなければその効力を発揮することができません。特に自筆で遺言書を作成する場合は、以下の点に注意しましょう。
保管は安全な場所に
自筆証書遺言や秘密証書遺言はご自身で保管することになるため、破棄や偽造のリスクの少ない安全な場所に保管しておくことが大切です。自筆証書遺言の場合は、前述した「自筆証書遺言の保管制度」を利用するのもおすすめです。
記載要件は忠実に守る
法務局が定める書き方の要件を守らなければ、その遺言書は残念ながら無効になってしまいます。
繰り返しになりますが、以下3点に気をつけましょう。
- 遺言書の全文、遺言の作成日付及び遺言者氏名を必ず遺言者ご自身で自書し、押印する。
- 財産目録は自書である必要はないが、自書でない場合、すべてのページに署名・押印が必要。
- 書き間違った場合の訂正や、内容を書き足したいときの追加は、その場所がわかるように示した上で、訂正又は追加した旨を付記して署名し、訂正又は追加した箇所に押印する。
「自筆証書遺言保管制度」を利用する場合は、指定の様式を守る
法務局に自筆証書遺言を預ける保管制度を利用する場合は、決められた様式があるので注意しましょう。具体的には以下の通りです。
- 用紙はA4サイズ
- 上側5mm、下側10mm、左側20mm、右側5mmの余白を確保する
- 片面のみに記載
- 各ページにページ番号を記載(1枚のときも1/1と記載)
- 複数ページでもとじ合わせない(封筒も不要)
遺言書を残さない場合はどうなる?
もし遺言書を残さなかった場合は、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、分配方法や割合などを話し合うことになります。民法で法定相続人の遺産分割割合が決められているので、その割合を目安に協議を行いますが、必ず法定相続割合に従わなければならないというわけではなく、相続人同士の協議に基づいて遺産分割割合などが決められます。
【相続人の優先順位と相続財産の割合】
第1順位:配偶者2分の1/子ども(直系卑属)2分の1
第2順位:配偶者3分の2/親(直系尊属)3分の1
第3順位:配偶者4分の3/兄弟姉妹4分の1
※配偶者は必ず法定相続人になりますが、配偶者以外は子ども>親>兄弟姉妹の順で優先順位が設けられており、優先順位の高い相続人がいれば、その下の優先順位の相続人は法定相続人にはならない仕組みになっています。(被相続人に子どもがいる場合は親や兄弟姉妹は法定相続人にはならない)また、 配偶者以外の相続人が誰かによって法定相続割合が変わります。
そもそも相続財産とはどのようなものを含むのかや、誰が法定相続人になるのかなど、相続の基礎知識については、【終活を始めるシリーズ】終活でしておくべき相続準備とは?で詳しくご紹介しているのでそちらも参考にしてください。
遺留分トラブルのリスクがあることを知っておこう
遺言書を作成することは、自分の財産を誰にどのような形で承継するかを事前に決めることですが、特定の相続人を優遇するような遺言書を作成した場合、それ以外の相続人から遺留分を侵害されたとして、遺留分請求の手続きが行われる可能性があります。
遺留分とは、法定相続人に最低限認められた遺産取得分のことをいいます。侵害した相続人は遺言書に則った相続をしたまでで、自分の意思で侵害したわけではないのですが、もしこの請求に応じなかった場合、調停や訴訟に発展してしまうことも考えられます。
このように、特定の相続人だけが有利になるような遺言書は、かえって争いの元になってしまうため注意しましょう。
遺言書作成についての相談先
遺言書を作成する場合の相談先は、弁護士や司法書士、行政書士がよいでしょう。一般的に弁護士の方が司法書士や行政書士よりも費用が高くなります。書面の作成だけであれば司法書士や行政書士でもできますが、弁護士は本人の代理人として交渉や調停、裁判ができるというメリットがあります。もしトラブルの恐れがあるのであれば、最初から弁護士に相談するのが得策でしょう。
また、もし「終活をしたいけど、何から始めていいかわからない」、「誰かに相談しながら進めたい」といった場合には、葬儀社の事前相談や終活相談を活用するのもおすすめです。さがみ典礼の終活相談なら、葬儀のことはもちろん、お墓のことやエンディングノートの書き方など、終活に関する不安や疑問について、なんでもお気軽にご相談いただけます。
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