お葬式のマナー
2023.10.19
【神道の葬儀を行う方へ】知っておくべき神葬祭のマナーや流れを詳しく解説
ご葬儀のマナーは、各宗教ごとに異なります。日本では9割が仏式の葬儀ですので、お葬式といえばお坊さんがいてお経を唱えている姿を思い浮かべる方がほとんどだと思います。その仏式の葬儀と内容は似ているものの、マナーや儀式が異なるものが神道式の葬儀です。神道ではお葬式ことを「神葬祭」といいますが、今回は「神葬祭」の流れやマナーを解説します。
仏教と神道の死生観の違いからくるマナーの違いや、神道特有の儀礼など、これから神道の葬儀を行う方、そして参列する方に役立つ情報をお届けしますので、ぜひ参考にしてください。
そもそも神道とは?
日本古来から伝わる民間信仰で、読み方は「しんとう」です。
神道は仏教やキリスト教のように開祖がいるわけではなく、日本人の生活の中で自然に生まれた考え方に基づく宗教で、「八百万(やおよろず)の神」と表現されるように、自然や神羅万象の中にたくさんの神様を見いだします。中でも最高神は「天照大神(あまてらすおおみかみ)」で、天皇はその子孫と言われていることからも、神道が日本固有の宗教であることがわかります。飛鳥時代に仏教が日本に伝来してからは、神道と仏教は深く関わりあってきましたが、明治時代に神仏分離令が発令されたことによって明確に区別されるようになりました。
神道の葬儀「神葬祭」とは
神道の葬儀を「神葬祭(しんそうさい)」といいます。
仏教における葬儀が「亡くなった方をあの世へと送り出すための儀式」とするのに対し、神道における葬儀は「故人の魂を守護神として祀るための儀式」です。なぜなら神道では亡くなった方は、子孫や家を守る守り神としてこの世にとどまるとされているからです。
また神道では生命力が減衰した状態を「穢れ」と捉えます。よく神社でお祓いをしてもらうことがあると思いますが、それは穢れを祓うことによって清められるという考えに基づくものです。そのため神道では死という非日常の状態を祓い清めるために神葬祭を行います。
神葬祭の流れ
神葬祭はたくさんのお祭りごとで構成されています。地域によって違いがあるためあくまでご参考としてですが、ここでは神葬祭の一般的な流れをご紹介します。
①ご臨終〜納棺までの流れ
・帰幽奉告(きゆうほうこく)
神道ではご逝去したことを帰幽(きゆう)と表現します。故人様がお亡くなりになったことを、神棚や祖霊舎(仏教における仏壇にあたるもの)に報告する儀式が帰幽奉告です。
具体的には「〇〇が帰幽いたしました」ということをお伝えし、神棚や祖霊舎の扉を閉めて白い紙を貼ります。
・枕直しの儀
故人様を北枕に安置する儀式です。白の小袖に白い足袋を身につけた故人様のお顔に白い布をかけて安置し、ご遺体のそばに枕飾りを飾ります。
【枕飾りの一例】
※地域によっても異なります。
- 枕の近くに「枕屏風」をおく。
- ご遺体の横に「守り刀」をおく。
※この時刃をご遺体に向けないように注意します。 - ご遺体の近くに小さな白木の八足案を置いて、洗った米・水・塩・榊などのお供物や、故人がよく食べていたものなどをお供えし、玉串やローソクを置きます。
・納棺の儀
ご遺体を清めたのち、棺へと納める儀式が納棺の儀です。納棺後は祭壇にお供え物をして全員で礼拝をします。
納棺の儀が終わり、出棺までの間に、毎朝夕故人様の好物をお供えする「柩前日供(きゅうぜんにっく)の儀」や、ご遺体を納める土地を祓い鎮める「墓所地鎮祭(ぼしょじちんさい)」が行われます。
②通夜祭〜葬場祭までの流れ
・通夜祭
通夜祭は仏式のお通夜にあたる儀式です。
雅楽の演奏とともに斎主(最高位の神職)が祭文を唱え、喪主・遺族・親族の順に玉串奉奠(たまぐしほうてん)を行います。
ちなみに祭文とは神に捧げることばで、仏式のお経に近いものです。また玉串奉奠は仏式の焼香に相当するもので、榊の木に紙垂や麻を結びつけた玉串を神様にお供えする行為になります。
【玉串奉奠のやり方】
- 神職から玉串を受け取ります。
(左手側が葉のついた部分になるよう横向きで受け取り、右手は上から、左手は下から添えるように持ちます) - そのまま祭壇の前まで進み、一礼をします。
- 玉串を時計回りに、葉がご自身の体側、根本が祭壇側を向く位置まで回転させます。
- 玉串を祭壇に捧げます。
- 一歩下がって姿勢を正し、二例二拍手一礼をし、元の位置に戻ります。
・遷霊祭(せんれいさい)
通夜式に続いて行われるのが遷霊祭で、こちらは親族のみで行われることがほとんどです。
遷霊祭では故人様の魂を霊璽(れいじ)に移していく「御霊移し(みたまうつし)」という儀式が行われます。御霊移しの際には会場の電気が消され、斎主によって遷霊詞が奉上されます。
ちなみに霊璽とは仏式の位牌に相当するもので、神道では身体から離れた故人様の魂が霊璽に宿り、その霊璽が守護神として子孫を守るとされています。
・葬場祭(そうじょうさい)
葬場祭は、仏式の葬儀・告別式に当たる儀式です。通夜祭と内容はほとんど変わりませんが、加えて弔電の読み上げや喪主挨拶、出棺前の棺への花入れなどが行われます。
【葬場祭の流れ】
- 手水の儀
斎場に入る前に身を清めます。
神社にお参りするときと同じ要領で、ひしゃくで水をすくい左手から右手の順で清め、最後に左手に水をため、その水で口を濯ぎます。 - ー 神職者の入場 ー
- 開式の辞
司会者より開会が告げられます。 - 修祓の儀
斎主が会場、棺、供物、斎員、参列者を祓い清める儀式を行います。その間は起立し深く頭を下げてお祓いを受けます。 - 奉幣・献饌の儀
斎員が祭壇に供物を供え、雅楽の演奏が始まります。 - 誄詞奏上
斎主が誄詞を奏上したのち、故人様の略歴や業績、人柄などについて述べ、守護神となることを祈ります。 この間、参列者は起立し頭を下げます。 - 弔辞の拝受
参列者代表の弔辞の読み上げがあります。 - 弔電の拝読
届いた弔電の読み上げがあります。 - 玉串奉奠
斎主→喪主→遺族→親族の順に祭壇に玉串を捧げます。 - 撤饌の儀
献上したお供物を下げます。 - ー 神職者の退場 ー
- 閉式の辞
司会者より閉会が告げられます。
③火葬〜ご帰宅までの流れ
・火葬祭
葬場祭の後、火葬場へと向かいますが、火葬の前に行われる儀式が火葬祭です。火葬祭では斎主による祭司の奉上があり、参列者が玉串を捧げます。
・埋葬祭
遺骨を埋葬する儀式です。神道では本来火葬後に埋葬を行なっていましたが、近年は死後50日後に行われる「五十日祭」で埋葬することが多くなっています。
・帰家祭(きかさい)
火葬(もしくは埋葬)後、自宅に戻って行う儀式が帰家祭です。斎主が葬儀を無事終えたことを報告する祭司を奉上し、参列者が玉串を捧げます。
・直会(なおらい)
仏式の精進落としに相当するものです。帰家祭が終わった後、神職や参列者の労を労うための宴を行いますが、神道ではその宴のことを直会といいます。
以上が、神道の葬儀「神葬祭」の流れです。
神葬祭のマナー
続いては神葬祭の服装や、玉串料・祈祷料(仏式の香典やお布施に当たるもの)のマナー、また神道の葬儀ならではの注意点などについても触れていきたいと思います。
服装のマナー
服装は基本的には仏式の葬儀と変わらず、葬場祭に参列する際は喪服を着用します。ただし友人・知人の方の通夜祭の場合は、急いで駆けつけたという気持ちを表現するために平服(地味な色合いのスーツやワンピースなど)を着用するのが本来のマナーとされています。しかし最近は葬場祭に参列できず通夜祭に参列するというケースも多いため、通夜祭でも喪服で参列する方は多いです。また仏式の葬儀では数珠を持参するのがマナーですが、仏教の教えに基づく慣習であるため、神道の葬儀で数珠は必要ありません。
神道における香典(玉串料)やお布施のマナー
参列者が故人様の霊前に供えるために持参する香典に相当するものを、神道では「玉串料(たまぐしりょう)」といいます。それ以外に、ご遺族が神社に通夜祭や葬場祭の御礼としてお渡しする仏式のお布施にあたるものも「玉串料」ということがあります。仏教のお布施のようなものは神道では特に名称が設けられてはいませんが、神社へお礼としてお渡しする費用を包んだ封筒の表書きには「御祈祷料」「御礼」などとするのが一般的です。
ここでは、神道における香典やお布施に相当するものの金額の相場や、封筒の書き方のマナーをお伝えします。
参列者が持参する玉串料(香典)の相場
仏教における香典と同じく、参列者が持参する玉串料の金額は、故人様との関係性によって変わります。
【玉串料の目安】
2親等以内の親族の場合 | 3~5万円 |
3親等以上の親族の場合 | 1~3万円 |
友人知人の場合 | 5千円〜1万円 |
ただこれはあくまで目安で、実際は年齢や収入、関係の深さによっても変わりますので、ご自身の立場や気持ちにふさわしい金額をお包みしましょう。
【玉串奉奠のやり方】
- 不祝儀袋の表書きは上段に「玉串料」または「御霊前」とし、下段にフルネームを記載します。
- 水引は黒白のものか双眼のものを選びます。
- 書く際は、薄墨を用います。
- 数字は「金壱萬圓也」などの漢数字を用います。
- 内袋には表中央に金額、裏面に住所氏名を縦書きで記載します。
注意点
※蓮の花が描かれた不祝儀袋は仏教用ですので使用しないよう注意しましょう。
神社に葬儀のお礼(お布施)としてお渡しする金額の相場
ご遺族様が神社にお礼としてお渡しする金額は、通夜祭・葬場祭の場合30〜40万円程度が相場です。ただしこれはあくまでも平均的な金額であり、神社との関係性などによっても変わります。そのため心配な場合は神社に問い合わせてもよいと思います。神社が明確な金額を提示してきた場合はその金額をお包みし、「お気持ちをお包みください」などのようにお答えになられた場合は相場の金額をお包みしましょう。
【包み方と注意点】
- のし袋または白い無地の封筒に入れてお渡しします。
- 表書きは上段に大きく「ご祈祷料」「御礼」または「玉串料」とし、下段にフルネームもしくは〇〇家と記載します。
注意点
※郵便番号が印刷されている封筒や横書きの封筒は避けましょう。
※神社への御礼は薄墨で書く必要はありません。
まとめ
ここまで神道のお葬式「葬場祭」の流れや基本的なマナーについてお伝えしてきましたがいかがでしたでしょうか。内容は仏式のお葬式に近いものがあるため名称さえ頭に入っていれば、違和感なく執り行うことができるのではないでしょうか。また仏教と神道の死生観の違いを認識しておくことで、儀式の深い部分まで理解することができるのではないかと思います。
これから神道式の葬儀を予定されている方は、ぜひ参考にしてください。
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